Q 父が亡くなりました。遺品を整理していると父が書いた遺言書が見つかりました。その遺言書には、父の財産(不動産・預貯金等)はすべて長男が相続すると書かれていましたが、父の相続人は長男だけでなく、母、私(次男)、長女がいます。長男も母も長女も、父の遺産をみんなで平等に分けたいと思っているのですが、父の遺言に従わなければならないのでしょうか?
A 民法は、被相続人(亡くなった方)の財産処分の自由を認めています。そのため、全財産を長男に相続させるという遺言も有効です。
しかし、裁判例では遺言と異なる遺産分割をすることも原則として可能としています。したがって、ご長男も含めて遺産分割協議を行い、皆さんが合意をすれば、遺産を相続人で平等に分けることができます。
ただし、遺言で遺産分割が禁止されている場合は、遺産分割協議はできないこととされています。(民法907条)また、遺言で遺言執行者が指定されている場合には、相続人は遺言執行者の行為を妨げることができません(民法1013条1項)。この場合にも遺言に反する遺産分割ができるかどうか、あるいは、遺言通りにいったん相続したうえで相続人間で贈与・交換契約として処理しなければならないのか等については慎重な判断が必要になります。
以上の次第ですから、ご質問のケースでは、お父様の遺言書で遺産分割が禁止されていない限り、全相続人で遺産分割協議を行うことにより、遺産をみんなで平等に分けることができます。しかしながら、お父様の遺言書で遺産分割が禁止されていないとしても、遺言書に遺言執行者が指定されている場合には、希望通りの遺産分割ができるかどうか、あるいは、別の手続きも必要となるのかについては、慎重な判断が必要ですので、一度専門家にご相談されたほうが良いと思います。