Q 先日、夫が亡くなりました。私たち夫婦には子どもがいません。夫の両親はすでに他界しており、夫には他に4名の兄弟がいます。夫名義の不動産があるので、早くこれを自分の名義にしたいと思っているのですが、何から手を付けていいのかさっぱり分かりません。弁護士に依頼したほうがいいのでしょうか。
A 弁護士に頼んだほうがいいのかということですが、それは、遺産分割に関してどのような問題があるのか、そしてあなた自身がどのようなことを望むのかなど、さまざまな事情によって結論は変わると言えるでしょう。
ですので、弁護士に依頼したほうがいいのかどうかを判断するために、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に依頼したほうがいいのはどのような場合でしょうか。
個別の事情による、というのが実際のところではありますが、あえて言うなら「相続人の間で争いがある場合」には、弁護士に依頼をしたほうがいいと言えるでしょう。
一般的に、遺産分割は、①相続人の範囲の確定、②遺産の確定、③相続分の修正、④遺産の評価、⑤遺産の分割方法の検討という順番で進められていきますが、それぞれの場面で問題、争いが生じます。以下、それぞれについて簡単に見ていきます。
①相続人の範囲の確定というのは、だれが相続人になるのかという問題です。
とても基本的なことですが、しっかり相続人の範囲を確定させておかないと、新たな相続人の登場によってそれまでの話し合いを一からやり直さないといけなくなるという事態にもなりかねないので、注意が必要です。
②遺産の確定とは、どの財産を相続人で分けるのかという問題です。
実は家族も把握していない遺産があったということもあり得ますし、あなたのケースでいうと、亡夫のご両親の遺産が分割されないまま残っていれば、それ(その一部)が亡夫の遺産として遺産分割の対象となることもあり得るでしょう。①と同様、最も基本的かつ重要なステップです。
③相続分の修正とは、特別受益(「すでに建物と土地をもらっている兄と平等というのは納得がいかない」)や寄与分(「父の店舗を手伝ってきた分はどうなる?」)の問題です。
これが認められるかどうかによって、実際に取得できる遺産が大きく変わってくることにもなりかねませんし、また、家族内での過去の出来事が問題となることから、感情的な対立の原因となることもしばしばです。そして、法律的な問題も多分に含んでいることから、最も争いになりやすい場面の一つということができるでしょう。
④遺産の評価とは、遺産の価値の問題です。
たとえば、不動産であれば、その評価方法によって、何百万円、何千万円の違いが生じることもあります。相続人それぞれの立場によって、高いほうが望ましかったり、低いほうが望ましかったりしますので、ここで争いが生じることもしばしばです。
⑤遺産の分割方法の検討というのは、最終的にどの財産をだれが取得するのかという問題です。
たとえば、実家の土地建物をだれが取得するのかについて争いとなった場合、実家の土地建物はこの世に2つとないものですし、お金のような分配の仕方もできませんから、争いが深刻化するおそれがあります。また、夫名義の不動産にあなたが現在居住している場合には、所有権として取得したほうがよいのか配偶者居住権として取得したほうがいいのか等複雑なことを検討する必要もあります。
このように、問題や争いがあった場合にそれにどのように対処するのかということもさることながら、あなた自身が問題と思っていなくても重大な問題が隠れていたり、問題にすべきであったことを見逃してしまったりするなど、目に見えない問題があることも少なくありません。
お一人で悩まれるのではなく、まずは専門家に相談して、今後の方向性を見定めていくことが重要です。
くわしいことは沖縄弁護士会にご相談ください。